2023.7.11

おでかけ / 旭川・層雲峡・空知

北海道は小説の舞台のスポットが多い…まずは『氷点』「三浦綾子記念文学館」がおすすめ【旭川】

旭川 文学 小説 氷点

私の三浦綾子文学コレクション この他にもたくさんあります

私は5年前、大学進学を機に北海道に移住して来ました。
せっかく北海道にいるのだからと、これまで様々な「北海道らしさ」に触れてきたつもりです。
沢山の「北海道らしさ」と出会う中で、最も感銘を受けたのが旭川出身の作家三浦綾子の作品でした。
 
これまで沢山の作品を読んできましたが、その中でも私の心を掴んで離さないのが『氷点』です。
『氷点』は、旭川を舞台に「原罪」、そして続編では「ゆるし」を描いています。
三浦綾子は当時無名の作家でしたが、この作品が懸賞小説に入選したことをきっかけに作家デビューを果たしたのでした。
 
彼女の生まれ故郷であり、『氷点』の舞台でもある旭川には、彼女の文学を結集した「三浦綾子記念文学館」があります。
三浦綾子文学を愛する人たちにとっては、まさに聖地と呼ぶことが出来る場所です。
 
この度、「三浦綾子記念文学館」を訪れ、魅力や見どころを伺いました。
三浦綾子文学の大ファンである私がこの記事を書くことが出来ること、大変光栄です。
 
この記事のあとに公開される、
小説『氷点』ファンなら必ず訪れて。作品に登場する旭川最古の喫茶
と合わせてご覧ください!
それでは、行ってみましょう!

三浦綾子記念文学館とは

「三浦綾子記念文学館」は、三浦綾子文学を広く国内外に知らせることを願い、1998年6月に開館しました。
 
この文学館の特徴は、全国でも珍しい、市民による「民営」の施設であることです。
開館から25年経つ現在も連日沢山のお客様を迎えており、時代が変わっても三浦綾子文学が人々の心に訴えるものを持っていることを伺い知ることが出来ます。
 
また、文学館と庭続きとなっている外国樹種見本林が、そのまま『氷点』の舞台となっている点も、作品ファンにとってはたまらないポイントでしょう。
旭川 文学 小説 氷点

常設展に展示されている三浦綾子文学の作品たち

常設展と企画展示

旭川 文学 小説 氷点

三浦綾子の人生を辿る常設展の様子

館内は1階が常設展、2階が年に一度変わる企画展になっています。
常設展には、三浦綾子の人生と各年代で書いた作品たちが紹介されています。
 
2階の企画展で現在公開されているのが、以下の2つの展示です。
・三浦文学案内人による企画展示「綾子と海」
・三浦綾子記念文学館・小さな企画展「同時代を生きた作家―遠藤周作と三浦綾子―」
※いずれも2024年3月20日までの開催
旭川で生まれ育った綾子は、旅先で海を見ることはあっても、生涯を通し暮らしのそばに海がある生活を送ることはありませんでした。しかしながら、彼女は自身の作品にたびたび海を登場させています。
企画展「綾子と海」では、「憧れと転機」「生と死の間(はざま)」「水平線の向こう」という3本の柱を立て、綾子が海を描いた理由について考察しています。
 
私が三浦綾子の作品に登場する海の中で最も印象に残っているのが、『続氷点』のラストでヒロインの陽子が見た、オホーツク海の燃える流氷です。
「ゆるし」をもたらす「大いなる者の意志」を広大な海と重ね合わせ、人間がどんなに小さな存在であるか、陽子がハッとする気づきを得るシーンは、脳裏に焼き付いて離れません。
野火のようにめらめらと燃える流氷の情景や、それを目にした陽子の目から流れる涙をありありと思い浮かべることが出来る躍動感のある文章は、テンポを大切にしていた綾子や夫の光世の努力の結晶なのではないでしょうか。
旭川 文学 小説 氷点

三浦文学案内人による企画展示「綾子と海」(画像提供)

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三浦綾子記念文学館・小さな企画展「同時代を生きた作家―遠藤周作と三浦綾子―」(画像提供)

また、三浦綾子と同じ時代を生き、彼女と同じクリスチャンでもあった遠藤周作について紹介する企画展も開催中。
長崎市の「遠藤周作文学館」とのコラボによって実現した同展示では、2人の作家を、彼らの生涯やクリスチャン作家として等、様々な切り口から比較を行っています。

綾子が夫の光世に贈った言葉の数々

綾子はデビュー作である『氷点』からすべての作品で、夫の光世への感謝の言葉を書き記しており、2階にはそれらの言葉が展示されています。
 
『氷点』で綾子が夫の光世に贈った言葉 
「神の与え給うたわが夫三浦光世様へ いいつらがたき感謝と愛を以てこの本を捧ぐ」

光世は綾子が作家デビューした後、スケジュール管理や原稿の清書など、作家活動のサポートを担いました。特に『塩狩峠』の執筆からは、肩こりや手の痛みを抱える綾子に代わり、綾子の言葉を原稿用紙に書き留める口述筆記を始めたのです。
 
隣の分館には、夫婦が口述筆記を行っていた書斎も復元されているので覗いてみてくださいね。
旭川 文学 小説 氷点

三浦夫婦が口述筆記を行っていた書斎 隣の分館に復元されています

『氷点』の舞台 外国種見本林を歩く

旭川 文学 小説 氷点
一通り展示を見終えたら、文学館を出て見本林へ。
 
見本林の入り口から、美瑛川が見える場所まで約10分ほどで行くことが出来ます。
『氷点』の舞台そのものであるこの場所には、『嵐が丘』を読んでいる陽子が北原邦雄と初めて出会うストローブ松の切り株や、自殺を行う川原(中州)などの各ポイントにパネルが貼ってあり、登場人物の心に想いを馳せながら、お散歩を楽しむことが出来ます。
陽子が物語の最後に遺書を書いて自殺しようとした朝、自分の足跡を振り返ったのが写真の堤防です。
自分が歩いてきた足跡が曲がっているのに気が付き、「自分だけは正しくあろう」と健気に生きてきた自分自身の人生と重ね合わせるのでしたね。
旭川 文学 小説 氷点

一休みできるカフェも

旭川 文学 小説 氷点

「氷点ラウンジ」のメニュー (画像提供)他にもオムライス等のお食事も提供しています

見どころいっぱいの記念館には、ほっと一息つくことが出来るカフェ「氷点ラウンジ」もあります。
氷点地ビール(750円(税込))や氷点ブレンドオリジナルコーヒー(450円(税込))など、ここでしか味わうことのできないメニューもたくさん。

地ビールやコーヒーは、この氷点ラウンジや記念館受付前のお土産コーナーでも購入が出来るので、ぜひチェックしてみてくださいね。(グッズの紹介はこちら
私は「森のお汁粉セット(塩昆布・お茶付き)(600円(税込)」を頂きました。
暖かな日差しが差し込むラウンジでいただくお汁粉は最高でした。
 
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森のお汁粉セット(塩昆布・お茶付き)(600円(税込)

旭川 文学 小説 氷点
『氷点」の舞台となった場所で、三浦綾子が歩んだ人生を辿ることが出来る三浦綾子記念文学館。
三浦綾子文学を愛するお客様の表情がとても印象的であるとともに、私自身も作品への愛がより一層深まる時間となりました。
是非たくさんの方に訪れて、『氷点』の世界観に浸かってみてほしいと思います。
またそれと同時に、この記事が三浦綾子文学を手に取るきっかけになったらとても嬉しく思います。
(ライター・土屋玲奈)
三浦綾子記念文学館
住所:北海道旭川市神楽7条8丁目2−15
開館日・休館日:
6月1日⇒10月31日:毎日開館 (無休)
11月1日⇒翌5月31日:月曜休
館 (月曜日が祝日の場合は、翌平日休館)
12月28日⇒1月5日:年末年始休館
開館時間:午前9時~午後5時(最終入館午後4時半)
入館料金:[大人]700円、[学生]300円
Webサイト:https://www.hyouten.com/
Instagram:miura_ayako_lm

(上記の情報は記事作成時点でのものです。
最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください)

三浦綾子記念文学館とは

旭川 文学 小説 氷点

常設展に展示されている三浦綾子文学の作品たち

「三浦綾子記念文学館」は、三浦綾子文学を広く国内外に知らせることを願い、1998年6月に開館しました。
 
この文学館の特徴は、全国でも珍しい、市民による「民営」の施設であることです。
開館から25年経つ現在も連日沢山のお客様を迎えており、時代が変わっても三浦綾子文学が人々の心に訴えるものを持っていることを伺い知ることが出来ます。
 
また、文学館と庭続きとなっている外国樹種見本林が、そのまま『氷点』の舞台となっている点も、作品ファンにとってはたまらないポイントでしょう。

常設展と企画展示

旭川 文学 小説 氷点

三浦綾子の人生を辿る常設展の様子

館内は1階が常設展、2階が年に一度変わる企画展になっています。
常設展には、三浦綾子の人生と各年代で書いた作品たちが紹介されています。
 
2階の企画展で現在公開されているのが、以下の2つの展示です。
・三浦文学案内人による企画展示「綾子と海」
・三浦綾子記念文学館・小さな企画展「同時代を生きた作家―遠藤周作と三浦綾子―」
※いずれも2024年3月20日までの開催
旭川 文学 小説 氷点

三浦文学案内人による企画展示「綾子と海」(画像提供)

旭川で生まれ育った綾子は、旅先で海を見ることはあっても、生涯を通し暮らしのそばに海がある生活を送ることはありませんでした。しかしながら、彼女は自身の作品にたびたび海を登場させています。
企画展「綾子と海」では、「憧れと転機」「生と死の間(はざま)」「水平線の向こう」という3本の柱を立て、綾子が海を描いた理由について考察しています。
 
私が三浦綾子の作品に登場する海の中で最も印象に残っているのが、『続氷点』のラストでヒロインの陽子が見た、オホーツク海の燃える流氷です。
「ゆるし」をもたらす「大いなる者の意志」を広大な海と重ね合わせ、人間がどんなに小さな存在であるか、陽子がハッとする気づきを得るシーンは、脳裏に焼き付いて離れません。
野火のようにめらめらと燃える流氷の情景や、それを目にした陽子の目から流れる涙をありありと思い浮かべることが出来る躍動感のある文章は、テンポを大切にしていた綾子や夫の光世の努力の結晶なのではないでしょうか。
旭川 文学 小説 氷点

三浦綾子記念文学館・小さな企画展「同時代を生きた作家―遠藤周作と三浦綾子―」(画像提供)

また、三浦綾子と同じ時代を生き、彼女と同じクリスチャンでもあった遠藤周作について紹介する企画展も開催中。
長崎市の「遠藤周作文学館」とのコラボによって実現した同展示では、2人の作家を、彼らの生涯やクリスチャン作家として等、様々な切り口から比較を行っています。

綾子が夫の光世に贈った言葉の数々

旭川 文学 小説 氷点

三浦夫婦が口述筆記を行っていた書斎 隣の分館に復元されています

綾子はデビュー作である『氷点』からすべての作品で、夫の光世への感謝の言葉を書き記しており、2階にはそれらの言葉が展示されています。
 
『氷点』で綾子が夫の光世に贈った言葉 
「神の与え給うたわが夫三浦光世様へ いいつらがたき感謝と愛を以てこの本を捧ぐ」

光世は綾子が作家デビューした後、スケジュール管理や原稿の清書など、作家活動のサポートを担いました。特に『塩狩峠』の執筆からは、肩こりや手の痛みを抱える綾子に代わり、綾子の言葉を原稿用紙に書き留める口述筆記を始めたのです。
 
隣の分館には、夫婦が口述筆記を行っていた書斎も復元されているので覗いてみてくださいね。

『氷点』の舞台 外国種見本林を歩く

旭川 文学 小説 氷点
一通り展示を見終えたら、文学館を出て見本林へ。
 
見本林の入り口から、美瑛川が見える場所まで約10分ほどで行くことが出来ます。
『氷点』の舞台そのものであるこの場所には、『嵐が丘』を読んでいる陽子が北原邦雄と初めて出会うストローブ松の切り株や、自殺を行う川原(中州)などの各ポイントにパネルが貼ってあり、登場人物の心に想いを馳せながら、お散歩を楽しむことが出来ます。
旭川 文学 小説 氷点
陽子が物語の最後に遺書を書いて自殺しようとした朝、自分の足跡を振り返ったのが写真の堤防です。
自分が歩いてきた足跡が曲がっているのに気が付き、「自分だけは正しくあろう」と健気に生きてきた自分自身の人生と重ね合わせるのでしたね。

一休みできるカフェも

旭川 文学 小説 氷点

「氷点ラウンジ」のメニュー (画像提供)他にもオムライス等のお食事も提供しています

見どころいっぱいの記念館には、ほっと一息つくことが出来るカフェ「氷点ラウンジ」もあります。
氷点地ビール(750円(税込))や氷点ブレンドオリジナルコーヒー(450円(税込))など、ここでしか味わうことのできないメニューもたくさん。

地ビールやコーヒーは、この氷点ラウンジや記念館受付前のお土産コーナーでも購入が出来るので、ぜひチェックしてみてくださいね。(グッズの紹介はこちら
旭川 文学 小説 氷点

森のお汁粉セット(塩昆布・お茶付き)(600円(税込)

私は「森のお汁粉セット(塩昆布・お茶付き)(600円(税込)」を頂きました。
暖かな日差しが差し込むラウンジでいただくお汁粉は最高でした。
 
旭川 文学 小説 氷点
『氷点」の舞台となった場所で、三浦綾子が歩んだ人生を辿ることが出来る三浦綾子記念文学館。
三浦綾子文学を愛するお客様の表情がとても印象的であるとともに、私自身も作品への愛がより一層深まる時間となりました。
是非たくさんの方に訪れて、『氷点』の世界観に浸かってみてほしいと思います。
またそれと同時に、この記事が三浦綾子文学を手に取るきっかけになったらとても嬉しく思います。
(ライター・土屋玲奈)
三浦綾子記念文学館
住所:北海道旭川市神楽7条8丁目2−15
開館日・休館日:
6月1日⇒10月31日:毎日開館 (無休)
11月1日⇒翌5月31日:月曜休
館 (月曜日が祝日の場合は、翌平日休館)
12月28日⇒1月5日:年末年始休館
開館時間:午前9時~午後5時(最終入館午後4時半)
入館料金:[大人]700円、[学生]300円
Webサイト:https://www.hyouten.com/
Instagram:miura_ayako_lm

(上記の情報は記事作成時点でのものです。
最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください)

2019年初夏に誕生した「SASARU」編集部では北海道民や北海道外に住む道産子、北海道が大好きな方…多くの人の心に刺さる北海道の話題や、つい押ささってしまう情報を集めています。編集部では、読んでくれる皆さんの日常生活に「SASARU」が染み入るように、日々企画を考え取材をしています。 読まさる記事、見ささる記事が、皆さんの心にささりますように。

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