5月から6月にかけて、大雪山系や日高山脈の岩がゴロゴロと積み重なったガレ場といわれる場所では、たびたびピチッ!ピチッ!と声が響きます。
繁殖の時期は、オスとメスがお互いの場所を確認するために、頻繁に鳴き声を出すそうです。その鳴き声の正体は「ナキウサギ」です。
国内では、北海道の大雪山系や日高山脈のみに生息していて、普段はなかなか姿を見せてくれない珍しい動物です。体長は10~15センチほどで、手のひらサイズの動物です。私たちがよく知るウサギの長い耳ではなく、丸く小さい耳をしています。
ナキウサギが生息できる環境は、1.暑くなく、2.えさとなる高山植物があり、3.住処となる岩場があることです。岩と岩のあいだは、夏もひんやりとした空気がたまっていて、暑さが苦手なナキウサギが過ごすのに非常に適しています。
私も、鹿追町の然別湖周辺のナキウサギの生息スポットへ撮影に行ってきました。
運が良ければ、一日に何度も見ることができるそうですが、私が行った日は、帯広で35℃以上の猛暑日になるなど、5月としては記録的な暑さになった日で、ガレ場も炎天下。
鳴き声は聞こえるものの、なかなか姿を現してくれませんでした。5時間ほど粘り引き上げようと思ったところ、岩の上で夕日を見つめるナキウサギを発見。岩の上にちょこんとたたずむ姿はとてもかわいらしかったです。
暑さが和らいだ撮影2日目は、30分に一度のペースで姿を現してくれました。北海道内も徐々に登山シーズンが始まっています。ぜひ、ナキウサギに会いに行ってみてはいかがでしょうか。
(気象予報士 吉井庸二)