世界に広がる日本のサクラ ソメイヨシノの北限は?

先日、カナダのトロントで桜が満開というニュースを耳にしました。ハイパークという大きな公園には60年前に日本から約2000本のソメイヨシノが送られました。

4月があまりに寒い年は、花が全く咲かないこともあるそうですので、今年は無事に咲いて何より。今ごろ、トロント市民も花を楽しんでいるかもしれません。

興味深いのは、カナダのトロントは北緯43・6度で、日本でソメイヨシノ群生の北限である北海道の道央、美唄市(北緯43.3度)より北に位置していることです。

ソメイヨシノは寒さに弱い品種で、-24度以下になる場所では育ちません。そのため、気象台が観測するサクラの標本木も札幌や函館はソメイヨシノですが、旭川や稚内ではエゾヤマザクラです。

世界では、日本のサクラの北限を超えて、群生しているところがあるようですね。そこで、世界のソメイヨシノを調べてみたところ、最も北の地域で咲いていたのが、デンマークのコペンハーゲン(北緯55.6度)です。ヨーロッパは北大西洋を流れる暖かい海流で冬も極端に気温が下がることがなく、育つことができるようです。

ちなみに、エゾヤマザクラはフィンランドのヘルシンキ(北緯60.2度)、ロシアのモスクワ(北緯55.7度)でも咲いていて、チシマザクラは北極圏の少し手前、アイスランドのレイキャビク(北緯64.2度)でも咲いているようです。

お花見を楽しむ文化は世界にも広まっていて、桜まつりなども開催されています。日本人にとって桜は、春を告げる花というだけにとどまらず、日本人の文化や精神を象徴する、とても特別な存在ですね。桜は日本人の文化を世界へ広げる存在になっているのかもしれません。ぜひ、世界でたくましく育つ日本の桜を見に行ってみたいですね。

(気象予報士 吉井庸二)

2019.5.15

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