2025.12.19

おでかけ / 札幌

“バレエ×舞踏×歌舞伎”融合!“Kバレエ・オプトの新作”札幌公演―麿赤兒や尾上眞秀が出演

にらみ合う約70歳差の尾上眞秀さんと麿さん=写真:渡邉 肇

バレエ、舞踏、そして歌舞伎。全く異なる3つの身体表現が融合する予測不能な舞台が2026年1月、札幌にやってきます。

世界的バレエダンサー・熊川哲也さんが率いる『Kバレエ・トウキョウ』と東急文化村が立ち上げた実験的プロジェクト「Kバレエ・オプト」の新作『踊る。遠野物語』です。

演出・振付は独創的なダンスで世界を魅了する森山開次さん。さらに舞踏家・麿赤兒(まろ あかじ)さんや、新進気鋭の歌舞伎俳優・尾上眞秀(おのえ まほろ)さんも加わりました。

民俗学者・柳田國男が怪異や伝承をまとめた日本民俗学の出発点「遠野物語」がベース。一体どんな世界が繰り広げられるのか。森山さんと麿さんに作品にかける想いをお聞きしました。

特攻隊員が迷い込む幻想世界…「鎮魂に向かう切ない旅路」

――遠野物語をどのように舞台作品へ落とし込んだのですか?

森山さん 遠野物語を構成する119話一つ一つは断片的で何か大きな物語があるわけではありません。

一方で、この119話を通じて柳田が伝えようとしたことを浮かび上がらせるために、横軸として主人公の「私」が遠野の幻想世界をめぐるというストーリーにしました。

「私」は遠野に墜落した戦闘機の特攻隊員。遠野物語が語るこの世とあの世の遭遇にヒントを得て、「私」が死に別れた許嫁の幻影を追い求め、最終的に鎮魂に向かう切ない旅路を描きます。

歌舞伎俳優の尾上眞秀さんには「私」をガイドするような存在を担ってほしいと思っています。麿さんの役どころは、この世界をしっかりと見詰める「山の中の翁」のようなイメージです。

麿さん 異界のような近づけないところに、生きている人間がなんとか近づこうとする、そのための折り合いの付け方がさまざまな伝承になって表れるのだと思います。

柳田が記した世界観は僕にとってはすごくピタッとくるんです。

日本人全員が持っているある種の想念のようなものが根底にあって、僕の創作する舞踏の中にも、どこかにそういうミステリアスな部分があります。

だから、僕にとっては今回、「里帰り」のような感覚で踊ることになるのかなと思っています。
作品の見どころを語る森山さん  (C)あきた芸術劇場ミルハス

バレエと舞踏の化学反応がすごい!「摩訶不思議な舞台になれば」

自身の思いを説明する麿さん   (C)あきた芸術劇場ミルハス
――バレエと舞踏を融合させた新たな芸術表現に挑戦されます。

森山さん 一概にバレエはこうだから、舞踏はこうだからと固定化した掛け合わせではない表現を目指したいです。

バレエは西洋の芸術として生まれましたが、今や日本人ダンサーも多く活躍しています。

日本人ならではの内省的な部分や地面に対しての感覚。そうした感性を持ったバレエダンサーが舞踏家の身体と出会うとどうなるのか、楽しみですね。

僕はどこか、バレエと舞踏の中間にいるかもしれない。一人ひとり違う身体の感性を持っていると思うので、稽古の中で皆さんと遠野物語を語り合いながらアプローチしていきたいです。僕も「河童」役で踊ります。

麿さん 土方巽(麿さんが師事した秋田市出身の舞踏家)は、秋田の農作業や寒さに耐える暮らしの中に着想を得て舞踏を創始しました。

舞踏は生活に根付いていて、バレエはイメージに根付いているという感じがします。

今回、遠野という広がりのある主題の中で、ある意味何でもできます。飛ぶ人がいれば、這いずり回る人もいるでしょう。

飛びたい人を引っ張る何か、という怖さがあってもいいかもしれない。身体というのは不思議なものです。摩訶不思議な舞台になればいいのかなと思いますね。

82歳のレジェンドが語る覚悟…「命がけで楽しみたい」

――これから稽古を重ねて作品を仕上げていく。意気込みをお聞かせください。

森山さん 遠野物語を読み込みながら、心に感じたものをしっかりと前に押し出していくことを大事にしたいです。

遠野物語に記された、言葉では説明できないようなさまざまな体験を実感として観客に届けること。踊りはそれができる力を持っていると思うので、「感じる身体」というのを作品の中で伝えていきたいです。

麿さん 遠野物語を解釈するのではなく、現代人がどう肌身に感じるか。そういう挑戦でもあると思うんです。

AI(人工知能)を頼れば、解釈や意味的なものは作るかもしれないけれど、肌の感覚というものは絶対に得られない。

何がリアルで、何が幻想なのか、その狭間の不思議な世界をどこまで表現できるか。僕はもう82歳です。舞台で死んじゃうかもしれないというワクワク感もありますよ。

遠野物語は「死」も一つのテーマとして内包しています。そういう意味では当たり役になるんじゃないかな。命がけで楽しみたいですね。

記者:千葉園子(あきた芸術劇場ミルハス)
稽古中に撮影した集合写真

「踊る。遠野物語」公演情報


熱を帯びる稽古(写真中央が麿さん)=写真:渡邉 肇

熊川哲也さんが総監督を務める『Kバレエ・トウキョウ』と東急文化村が2022年に立ち上げた新プロジェクト「Kバレエ・オプト」の最新作。

舞台はあの世とこの世の境目にあるとされる「遠野」。特攻隊員と許婚の愛の物語を幻想的な世界観で描きます。

演出・振付・構成 森山開次

出演 石橋奨也、大久保沙耶(Kバレエ・トウキョウ)、麿赤兒、尾上眞秀、森山開次 ※Kバレエのトップダンサー、麿さん率いる「大駱駝艦(だいらくだかん)」のダンサーらも集結

日時 2026年1月20日(火)午後6時30分開演

会場 札幌市教育文化会館 大ホール(札幌市中央区北1条西13丁目)

料金 S席1万5000円/A席1万2000円 ※未就学児の入場は不可

主催 北海道新聞社、道新文化事業社、UHB北海道文化放送

チケット・お問い合わせ 道新プレイガイド https://doshin-playguide.jp/ticket/detail/748

特攻隊員が迷い込む幻想世界…「鎮魂に向かう切ない旅路」

作品の見どころを語る森山さん  (C)あきた芸術劇場ミルハス
――遠野物語をどのように舞台作品へ落とし込んだのですか?

森山さん 遠野物語を構成する119話一つ一つは断片的で何か大きな物語があるわけではありません。

一方で、この119話を通じて柳田が伝えようとしたことを浮かび上がらせるために、横軸として主人公の「私」が遠野の幻想世界をめぐるというストーリーにしました。

「私」は遠野に墜落した戦闘機の特攻隊員。遠野物語が語るこの世とあの世の遭遇にヒントを得て、「私」が死に別れた許嫁の幻影を追い求め、最終的に鎮魂に向かう切ない旅路を描きます。

歌舞伎俳優の尾上眞秀さんには「私」をガイドするような存在を担ってほしいと思っています。麿さんの役どころは、この世界をしっかりと見詰める「山の中の翁」のようなイメージです。

麿さん 異界のような近づけないところに、生きている人間がなんとか近づこうとする、そのための折り合いの付け方がさまざまな伝承になって表れるのだと思います。

柳田が記した世界観は僕にとってはすごくピタッとくるんです。

日本人全員が持っているある種の想念のようなものが根底にあって、僕の創作する舞踏の中にも、どこかにそういうミステリアスな部分があります。

だから、僕にとっては今回、「里帰り」のような感覚で踊ることになるのかなと思っています。

バレエと舞踏の化学反応がすごい!「摩訶不思議な舞台になれば」

自身の思いを説明する麿さん   (C)あきた芸術劇場ミルハス
――バレエと舞踏を融合させた新たな芸術表現に挑戦されます。

森山さん 一概にバレエはこうだから、舞踏はこうだからと固定化した掛け合わせではない表現を目指したいです。

バレエは西洋の芸術として生まれましたが、今や日本人ダンサーも多く活躍しています。

日本人ならではの内省的な部分や地面に対しての感覚。そうした感性を持ったバレエダンサーが舞踏家の身体と出会うとどうなるのか、楽しみですね。

僕はどこか、バレエと舞踏の中間にいるかもしれない。一人ひとり違う身体の感性を持っていると思うので、稽古の中で皆さんと遠野物語を語り合いながらアプローチしていきたいです。僕も「河童」役で踊ります。

麿さん 土方巽(麿さんが師事した秋田市出身の舞踏家)は、秋田の農作業や寒さに耐える暮らしの中に着想を得て舞踏を創始しました。

舞踏は生活に根付いていて、バレエはイメージに根付いているという感じがします。

今回、遠野という広がりのある主題の中で、ある意味何でもできます。飛ぶ人がいれば、這いずり回る人もいるでしょう。

飛びたい人を引っ張る何か、という怖さがあってもいいかもしれない。身体というのは不思議なものです。摩訶不思議な舞台になればいいのかなと思いますね。

82歳のレジェンドが語る覚悟…「命がけで楽しみたい」

稽古中に撮影した集合写真
――これから稽古を重ねて作品を仕上げていく。意気込みをお聞かせください。

森山さん 遠野物語を読み込みながら、心に感じたものをしっかりと前に押し出していくことを大事にしたいです。

遠野物語に記された、言葉では説明できないようなさまざまな体験を実感として観客に届けること。踊りはそれができる力を持っていると思うので、「感じる身体」というのを作品の中で伝えていきたいです。

麿さん 遠野物語を解釈するのではなく、現代人がどう肌身に感じるか。そういう挑戦でもあると思うんです。

AI(人工知能)を頼れば、解釈や意味的なものは作るかもしれないけれど、肌の感覚というものは絶対に得られない。

何がリアルで、何が幻想なのか、その狭間の不思議な世界をどこまで表現できるか。僕はもう82歳です。舞台で死んじゃうかもしれないというワクワク感もありますよ。

遠野物語は「死」も一つのテーマとして内包しています。そういう意味では当たり役になるんじゃないかな。命がけで楽しみたいですね。

記者:千葉園子(あきた芸術劇場ミルハス)

「踊る。遠野物語」公演情報


熱を帯びる稽古(写真中央が麿さん)=写真:渡邉 肇

熊川哲也さんが総監督を務める『Kバレエ・トウキョウ』と東急文化村が2022年に立ち上げた新プロジェクト「Kバレエ・オプト」の最新作。

舞台はあの世とこの世の境目にあるとされる「遠野」。特攻隊員と許婚の愛の物語を幻想的な世界観で描きます。

演出・振付・構成 森山開次

出演 石橋奨也、大久保沙耶(Kバレエ・トウキョウ)、麿赤兒、尾上眞秀、森山開次 ※Kバレエのトップダンサー、麿さん率いる「大駱駝艦(だいらくだかん)」のダンサーらも集結

日時 2026年1月20日(火)午後6時30分開演

会場 札幌市教育文化会館 大ホール(札幌市中央区北1条西13丁目)

料金 S席1万5000円/A席1万2000円 ※未就学児の入場は不可

主催 北海道新聞社、道新文化事業社、UHB北海道文化放送

チケット・お問い合わせ 道新プレイガイド https://doshin-playguide.jp/ticket/detail/748

2019年初夏に誕生した「SASARU」編集部では北海道民や北海道外に住む道産子、北海道が大好きな方…多くの人の心に刺さる北海道の話題や、つい押ささってしまう情報を集めています。編集部では、読んでくれる皆さんの日常生活に「SASARU」が染み入るように、日々企画を考え取材をしています。 読まさる記事、見ささる記事が、皆さんの心にささりますように。

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