海外のセレブが結婚前に取り交わす『婚前契約書』とは?

『婚前契約書』と聞くと、ちょっと物騒で、冷たい印象があるかもしれません。けれどその本質は、お互いを思いやる約束事を書いたラブレターなのかも…。結婚前に書く契約書の内容は、どのようなものなのかを解説します。

2019.5.27

ひとり歩きする『婚前契約書』のイメージ

『婚前契約書』という名称を、聞いたことがあるひとは海外ツウですね!ハリウッドセレブが離婚する際、「プリナップ」または「プレナップ」と呼ばれている『婚前契約書』に基づいて、お互いの資産や子どもたちなどに関することを整理していくようです。セレブたちが離婚したニュースのおかげで、『婚前契約書』の知名度は上がりましたが、契約書本来の役目とはかけ離れたイメージがついてしまいました。

そのイメージとは、『婚前契約書=離婚前提』というものです。私自身、結婚する際には『婚前契約書』を結んでくれる人がいいと思っていますが、それを友人に話すと、「どうして結婚する時に離婚を前提で契約を結ぶの?」と、驚かれてしまいました。『婚前契約書』とは、結婚してからでは取り決めがしにくいことを、事前に話し合って書面化するもので、離婚時だけの契約ではないということをご理解くださいね。

『婚前契約書』は離婚の前提で作るものじゃない!

『婚前契約書』で決める内容は各夫婦で自由に選択できます。民法には「契約自由の原則」というものがあり、『契約の内容は当事者で自由に決められます』というものです。もちろん契約の性質によって、一定の条件が決められているものもありますが、『婚前契約書』は公序良俗に反しない限り、全ての契約内容を自由に決めることができます。「これから結婚をするという時に、わざわざ離婚の話をしたくない」というご夫婦は、離婚時の条件を決めない『婚前契約書』を作ることもできます。

婚姻中の落とし穴?なぜ「婚前」の契約が必要なのでしょう。

『婚前契約書』はその名のとおり、契約を締結する日は「婚前」でないといけません。これは民法に「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができる」という条文があるからです。婚姻中ということがウィークポイントになるなんて、意外ですよね。

契約というと、夫婦間でどんな取り決めをするのか想像がつきにくいと思いますが、普通に生活をしているだけで、実はたくさんの契約が成り立っています。そのほとんどが『双務契約』といって、お互いに平等の義務があり、権利があるというものです。極端な例として「私はご飯を作るから、後片付けはお願いね」というのも『双務契約』です。しかし、残念なことにこの契約も、婚姻中に決めたことは、いつでも一方から取り消すことができてしまうのです。

夫婦というものは不思議なもので、新婚のうちは、せっせと約束を守って楽しく暮らせていても、数年経てば、お互いに甘えや慣れが出て、契約どころか、いつの間にか取り消されてしまった…ということもめずらしくありません。

「給料は妻が預かって家計のやりくりをする」という婚姻中に交わした契約が、突然「今日から生活費だけを渡す」など、変更や取り消されたら困る約束事は、「婚前にしておきましょう!」というのが婚前契約なのです。

海外セレブはご自分たちの資産を守るためや慰謝料を軽減させるためなどに『婚前契約書』を作りますが、一般的には、結婚生活に密着した日々の細かい取り決めを遂行していくための契約!といったところでしょうか。
北海道の離婚率は高く、全国3位。(平成27年度 出典:北海道庁HPhttp://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tkk/databook/2017/0201.htm)
東北などの雪国は離婚率が低いのですが、北海道は男女共、大らかな気質で前向きのひとが多いせいでしょうか。いずれにしても、備えあれば憂いなし。夫婦間のトラブルを防ぐためにも、婚前の約束事はしておいて損はないですよ♪

(司法書士 大西千桜里)

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